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2009年9月 9日 (水)

風と陽光(ひかり)のエリア~4~

函館から苫小牧へ。
海に沿ってR5を走る。
ショップの親父さんがくれた餞別の封筒に手紙が入っていた。
「俺の舎弟が苫小牧でショップをやっている。
 メンテナンスを頼んであるから、北海道に上陸したら
 必ず、真っ先に寄れ」
地図に書かれたショップに着くと、親父さんの舎弟という人は親切に対応してくれた。
そして、親父さんの伝言を私に伝えた。
「実家に電話しろ!それでここのメンテ代はチャラだ。」
ショップの人が笑いながら受話器を差し出す。

私は実家のダイヤルを回した。
何度目かの呼び出し音の後、母が出た。
「僕だけど・・・」
受話器からの声が突然、涙声に変わる。
母の問いかけに「あぁ」としか答えられない。
そして、最後に「3月には帰る。」とだけ告げ、受話器を置いた。

ショップを出ると、ただ、がむしゃらに走った。
走ることで母の声を振り払いたかった。
そうしなければ、次に進めない気がしたから・・・

気がつくとあたりは夕闇に包まれ、道は峠道に差し掛かっていた。

道沿いに現れた朽ち欠けたドライブインに乗り入れ、エンジンを切った。
虫の声がエンジン音にとって変わり、闇がすぐ近くに感じられた。
母や父の顔、親父さんや友達の顔が闇に浮かぶ、
頭の中で何かが動き回り、それが何かわからないまま時間が過ぎた。

オートバイにまたがったままの足がシリンダーカバーに触れる。
すっかり冷たくなっていた。
私は苦笑いとともにエンジンに火を入れた。
CBが「無理をするな。」とつぶやく。
「大丈夫だ!楽しい峠越えにしよう」
ギヤをローに入れた。

苦しい峠越えになった。

街灯が一本もない上に、コーナーがきつい。
トンネルで加速すると出口がコーナーだったりする。
上るにつれて、霧まで出てきた。

私は頼りになる道案内を探した。
しばらくすると、同じリズムのトラックを見つけた。
一定の距離をとって、後ろについていく。

今までの緊張から解かれたせいか、突然、母の顔が闇に浮かぶ。
と、同時に、今まで見えていたテールランプが消えた。

私は離されたと思いアクセルを開けた。
すると、いきなりトラックのリアパネルが視界いっぱいに広がった。

フルブレーキング。リアが滑り出す。
カウンターをあて、必死でバランスを取る。
突然、リアがグリップを取り戻し、勢いよくオートバイが起き上がる。

ハイサイド!!!

腕の筋肉の千切れる音と共にハンドルから手が離れ、体が投げ出された。
アスファルトに背中から落ち、息が出来ない。
視界が徐々に闇に閉ざされていく。

最後に母の泣き顔を見た気がした。

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