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2009年9月14日 (月)

風と陽光(ひかり)のエリア~9~

暗いショーウィンドウの中に数台のスーパースポーツが
スポットに照らし出されて、浮かび上がる。

その走るためにシェイプアップされた姿が
今の自分のようで、ため息が出た。

先日、契約を済ませ、店を出る私をおやじさんが手招きした。
「今日、車だろ?『一杯やってけ』とは言えんから、
 近いうち、仕事の帰りでもに寄れや」

それで、担当していたプロジェクトが一段落した後、
部下たちの誘いを断り、おやじさんのショップに寄ったわけだ。

ショップの脇のインターホンを押すと
「おぉ、来たか。すまんが奥のちっこい方のガレージに来てくれ。
 俺専用の作業場だ。」

ガレージのドアを開けると中は真っ暗だった。
窓から入る街灯の明かりで、作業台に一台のオートバイが乗っているのがわかる。
近づくと、突然、灯が点いた。
その眩しさに一瞬、目がくらむ・・・

徐々に明るさに慣れて行く目の前に、ゆっくりとあの日の光景が浮かび上がる。
作業台の上に直列4気筒、赤と白にペイントされたタンクに翼のエンブレム・・・
あの日・・・卒業式の後ショップで見たCB400SF

見入っている私に
「どうだ?懐かしいだろう?」
と、おやじさんが声をかける。
「はい。これ、私が乗っていたのと同じぐらいの年式ですよね?
 こんな古いの、まだ乗っている人いるんですか?
 というか、まだ走れるんですか?」

「走れるさ。俺が面倒見てんだ。造りは古いが状態は新車と変わらん・・・
 ただな、こいつは本当の意味で何年も走ってないんだ。」

「本当の意味で・・・?」

「あぁ、こいつは相棒を待っているんだ。
 自分と一緒に走ってくれる相棒を・・・」

そう言いながら、シートカウル下あたりを指差す。

訝りながら近づき、目を凝らすと
そこに小さな傷があった。

「おやじさん、これ・・・?」

「あぁ、そうだ。お前が乗ってたやつだ。
 事故の後、しばらくしてスクラップにされかかってたのを
 引き上げてきた・・・」

「お、おやじさん・・・」
驚きのあまり、それ以上声が出ない。

「乗ってやってくれんか?
 ずっと待っていたんだ。
 お前がまた一緒に走ってくれるのを・・・」

私は溢れる涙を隠すことも忘れて、何度も何度も頷いていた。

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