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2009年9月13日 (日)

風と陽光(ひかり)のエリア~8~

「早く、来てくださいよ」
「今更、俺なんかに客って誰だよ・・・」
奥から、先ほどの息子さんと
少し歳はとっているが間違いなく親父さんの声が近づいてくる。

どんな顔でどんな挨拶を交わせばいいか、
私にはわからないでいた。

店に確かに20年の歳月を顔に刻んだ親父さんが現れた。

とっさに、私は「ご無沙汰しております」と声をかけた。

親父さんは、私を見て、記憶を猛スピードで手繰り寄せ、
そして、記憶の中の私を見つけたようだ。

「おまえ、生きていたのか・・・?」
まさに、「幽霊でも見たような顔」で、そう言った。

「え?」

親父さんはもう一度・・・
「おまえ、生きていたのか・・・?」

思わず、私は
「足は、ついてますけど・・・」と言っていた。

親父さんは合点がいかない、という顔で
「生きていたなら、何で今まで・・・」

私は、壁にかかった20年前の写真を見ながら言葉を捜した。

「で、何で今まで連絡をよこさなかった?」
店舗の裏の自宅のテラスで、親父さんは椅子に座るなり切り出した。

『何故、連絡をしなかったんだろ?』
私が考えあぐねていると親父さんが続けた。

「あれは、お前が旅に出た年の冬だったか、
 北海道から『お前が事故ったらしいが詳細がわからない』と連絡が入ってな」

『冬か、事故から3ヶ月は経ってるな』

親父さんはコーヒーを一口飲むと続けた

「履歴書を頼りに家を訪ねたんだが、引っ越したあとでな・・・
 近所に訊いて回ったが、引越し先は誰も知らなかった。
 中には、家を出るとき、お母さんが白い箱を抱えてたなんて人もいてな」

それで、いきなり、「生きてたのか?」だったのか。

私は、事故のこと、引越しのこと、そして、その後のことを全て話した。
しかし、連絡をしなかった理由になって、言葉をつまらせた。

そこへ、息子が顔を出した。

「決まったかい?」親父さんが尋ねた。

「ハイ」息子が照れながら答えた。

「どんなオートバイにしたんだい?」

「目を三角にしないで、景色の移り変わりや空気の香りを感じられる・・・」

そこで、親父さんが笑い出した。
私も下を向いて、笑いをかみ殺す・・・

「いやいや、すまん。全く同じことをあんたの父さんが20年前に、俺に言ったのを
 思い出してしまったんだ。やっぱり、血は争えないな~~」

私は、声を出して笑いながら、うなずいた。
壁の写真の中の『19歳の私』も微笑んでいた。

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