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2009年9月10日 (木)

風と陽光(ひかり)のエリア~5~

闇の中でいくつもの赤い点が尾を引きながら揺れている。
やがて、一点に集まり、白い光となって、闇を支配していく。

闇が完全に白い世界に変わると、
やはり、そこには母の泣き顔があった。

私が目を覚ましたのは、事故から三日後、病院のベットの上だった。

母は、包帯を巻いた私の手を握り締めて、ただ、泣いていた。
父は、私と目が合うと、
「二度とかあさんを泣かせるな」と言って、病室を出て行った。
後から聞いた話だが、あの仕事人間の父が、私の事故の一報を
聞くなり、すべての仕事を投げ出し、北海道へ飛んできて
三日三晩、病室に泊まり込んで付き添ってくれたそうだ。

こうして、私の一年間の予定だった「旅」は幕を閉じた。

それから、半年、苦しいリハビリが続いた。
右上腕筋断絶、左足首単純骨折、
一番ひどかったには、アスファルトに叩きつけられたときの
腰骨の圧迫骨折だった。

父は、事故の時の無断欠勤がひびいて、本社から支社に転勤になり
実家も引っ越した。
私は、翌年の4月に復学した。

私は、CBがどうなったのか、そのとき、聞くことも出来ず、
二度と親父さんのショップに顔を出すこともなかった。

「・・・で、なんでオートバイに乗りたいんだ?」
「それは・・・」
息子は、延々と『なぜ、オートバイに乗りたいか』を話し続けた。
そんなこと、聞くまでもなかった。
オートバイの魅力はよくわかっている。そして、怖さも・・・

最後まで聞き終えると、私は無言で部屋を出ようとした。
私は、息子を止める言葉を持ち合わせていなかった。
「おとうさん・・・?」
「今度の休みに付き合え」
「えっ?」
「次の休みに俺に付き合えと言っているんだ」
「おとうさん?」
「どうした?いやか?」
「いや、お父さんが『俺』って言うのはじめて聞いた。」
「そうか・・・」
私は、自分でも驚きながら扉を閉めた。

私の中で、何かが動き始めた。
静かに、そして、急速に・・・
あの映画を見たときのように・・・

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