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2009年9月12日 (土)

風と陽光(ひかり)のエリア~7~

いくつもの街を結んで走る幹線道路
片側二車線の道を、息子を助手席に乗せ、走っている。

次の角を曲がればあの・・・、ショップはなかった。
まぁ、想像はしていた。お世辞にも商売がうまい、親父さんではなかった。
まして、このご時世に、20年の歳月だ。
ショップがあった場所には、遠目にも総ガラス張りとわかる3階建てのビルが建っていた。

近づくにしたがって、私は「もしや・・・」と思い始めた。
手前のビルに隠れていた看板に大きくオートバイメーカーの名前が入っている。

少しの期待を胸にショップの前に車を止めて、中に入った。

中では、看板と同じロゴの入ったつなぎを着た若い人たちが忙しく動き回っている。
その後ろで、私より10歳ほど若い男性が指示を与えている。
こちらは、ネクタイ姿に同じロゴの入ったブルゾンを羽織っている。

私は男性に声をかけてみた。
「あの、こちらの社長さんは・・・?」
男性は訝りながら私を見て
「私ですが・・・?」
やはり、親父さんのショップではなかった。

私は、息子を指差して
「こいつが、オートバイが欲しいというんですが・・・」
「わかりました。お~い」
男性は、近くのつなぎ姿の店員さんを呼びつけて
「お客さんの相談に乗ってあげて・・・」と言った。
「お父さんは、あちらでコーヒーでも飲まれませんか?」

私は、促されるままにテーブルに着いた。

男性が、コーヒーを私の前に置きながら、
「失礼ですが、あの写真の方ではありませんか?」
彼が指差した壁に、息子が私に見せたものと同じ写真が飾ってあった。

「え?」
「そうですよね。父からいつも聞かされてました。『夢だけ追いかけて後先考えずに旅に出たバカ』だと・・・あ、父が言ったんですよ」
「じゃあ、あなたは・・・?」
「息子です。」
「でも、ショップの名前が・・・、それに系列店ではなかった・・・?」
「えぇ、あのころはそうですね。でも、このご時世です。大きな看板がないと、商売はなかなか・・・、親父は最後までいやだったようですが・・・」
「そうですか、で、親父さんはいつ・・・」
「いつ?・・・あ、ピンピンしてますよ。滅多に店には出てきませんが、裏の自宅で悠々自適な隠居生活をしてます。」
とんでもない勘違いをしたようだ。
「呼んできましょう。きっと、驚きますよ」
そう言うと彼は、奥にかけていった。
私は、「『バカ』か、確かにな・・・」と思いながら、写真の中の20年前の自分をまぶしく見つめていた。

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