« 風と陽光(ひかり)のエリア~1~ | トップページ | 風と陽光(ひかり)のエリア~3~ »

2009年9月 7日 (月)

風と陽光(ひかり)のエリア~2~

厳格な父だった。優しくおとなしい母だった。
何不自由のない家庭で親に逆らうこともなく、
言われるままの進路を進み、「進学校」と呼ばれる高校に入った。

このまま大学に進み、父のように安定した職に就くことに
何の疑問もなかった。

17の夏までは・・・

予備校の帰り、友達に誘われ、見に行った映画の中の
草原を渡る風と、波を照らす陽光(ひかり)・・・、
そして、なにより主人公が駆るオートバイに私は惹かれしまった。

もっと、いろいろなものが見たくなり、
それには、あのタイヤが二つしかない不安定な「オートバイ」という
乗り物が必要不可欠に思えた。

そして、夏休みが終わるころ、両親に自分の気持ちを打ち明けた。

二人とも許してくれるはずはなかった。
まだ、オートバイ=暴走族という見方が一般的なころだ。
父は激怒し、母は泣いていた。

私は、なぜ、オートバイに乗りたいかを必死で話した。

ついに、父が半分突き放す感じで折れた。ただし、条件付で・・・
高校の成績を下げないこと。
父の決めた大学に現役合格すること。
オートバイに関するお金は一切援助しない。

それから、学校と予備校以外の時間を
すべてアルバイトに費やした。
家に帰ると深夜まで机に向かった
ある計画を胸に秘めて・・・

その甲斐があって、3年の10月には、
父の言う大学に推薦で入学が決まった。

そして、計画の準備をはじめた。

近くの教習所に入学手続きを済ませ、
時間の許す限り通った。
それと同時にアルバイトを隣町のオートバイショップに変えた。
計画のために短期間でオートバイの知識をできるだけ
溜め込みたかった。

アルバイト先でオートバイのカタログをもらい、
夜遅くまで、時間の経つのも忘れて眺めていた。

周りの友達が受験体制に入るのを尻目に
アルバイトと教習所通いに励んだ。

学校、教習所、アルバイト、
そして、オートバイのカタログ
眠りにつけば、夢でオートバイ雑誌に
出てくる景色の中を旅した。

そして、何度目かの旅が終わった時、
春が訪れ、高校を卒業した。

卒業式を終え、アルバイト先に顔を出すと、
発売間もない、ホンダCB400SFが整備台の
上に乗っていた。
それは、夢の中で私と旅をしたオートバイそのものだった。
吸い付けられるように近づくと
整備台の傍らにしゃがんでいた親父さんが
「いいオートバイだろ?」
「はい」
「卒業式は終わったのか?」
「はい」
私は、目の前のオートバイに夢中だった。
「知り合いの店で試乗用に使ってたオートバイだが
 三か月分のバイト代でいいぞ」
「はい・・・え?」
「三か月分のバイト代と引き換えに、このオートバイは お前のものだと言ってるんだ」
「本当ですか!?」
「あぁ、新車をプレゼントとはいかんが俺からの卒業祝いだ!
 メットも同じカラーリングのものが今日届く、名義も変更したから
 今日からでも乗れるぞ」
「あ、ありがとうございます。」
「それから、今日でクビな」
「え!?」
「入学式まで時間がないだろ、少しでも長く乗ってオートバイに慣れろ」
「はい、ありがとうございます。」

それから、毎日、CBで近くの山や海に出かけた。

そして、3週間が過ぎ、入学式を迎えた。

私は、入学式が終わるとサークルの勧誘でごった返すキャンパスを抜け
「学生課」に向かった。
胸に秘めていた計画を実行に移すために・・・

|

« 風と陽光(ひかり)のエリア~1~ | トップページ | 風と陽光(ひかり)のエリア~3~ »

オートバイ小説」カテゴリの記事

コメント

Papaさん、こんばんは。

いや~引き付けられますね~。つづきが楽しみです。

現代の子は、免許取得、バイク購入はどうなんですかね? 我慢して夢を実現させるために努力するなんてことはあるんですかね?

彼はどうなんでしょ?(笑)

投稿: KON | 2009年9月 7日 (月) 21時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1235832/31249792

この記事へのトラックバック一覧です: 風と陽光(ひかり)のエリア~2~:

« 風と陽光(ひかり)のエリア~1~ | トップページ | 風と陽光(ひかり)のエリア~3~ »